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春の探偵日誌 総集編 2

木曜日は静かなまま終わった。対象者は勤務を終え、バスに乗り、まっすぐ帰宅した。

そして迎えた金曜日。


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探偵たちは水曜日の動きを再現するため、裏手の沿岸道路に事前に配置を完了していた。

バイク担当の探偵は、浮気妻が勤務先を出る10分前には現場で待機していた。


そのとき、無線が鳴った。

「前回と同じ黒のワンボックスが停車しました。位置は前回と全く同じです」

報告を受け、メインの探偵も緊張を高める。


そして、定刻どおり浮気妻が勤務先から姿を現した。

前回とまったく同じように、彼女は裏手へと向かい、大型トラックの死角へと入っていった。


次の瞬間、黒のワンボックスの助手席のドアが開き、浮気妻が乗り込むのを遠目に確認。そのまま車両は走り出した。


バイク担当の探偵が即座に尾行を開始。距離を取りつつ、カメラで車両の後部と周囲の状況を撮影。数分遅れて、調査車両も尾行に加わった。


車両は市街地へ向かって走行。途中、コンビニに立ち寄り、運転手の男が車内に軽食と飲料を持ち込んだ。

浮気妻は車外に出ることなく、そのままワンボックス内に留まっていた。


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そして数十分後、ワンボックスは郊外のラブホテルへと入っていった。


看板の明かりが灯るホテルの敷地内にゆっくりと進入する黒い車体。

探偵たちはそれを見届け、証拠を撮影する。


天候はやや曇り。肌寒い海風が車体を撫で、張り込みの車内には静かな緊張が満ちていた。

こうして、金曜日の調査は順調に進行し、次の決定的瞬間を待つ時間へと移っていった。


ホテルの外観はやや古びた雰囲気で、外壁には時代遅れのネオンサインが輝いていた。金曜の夜ということもあり、駐車場にはちらほらと他の車の姿も見える。


今回のラブホテルには大きな問題があった。


駐車スペースが極端に狭く、車内からの張り込みには適さない。ホテルの駐車場に停めてしまえば逆に目立ってしまうリスクがある。敷地のすぐ向かい側にある小規模なショッピングモールの駐車場。ここに車を駐車すれば、ホテルの出入口をほぼ真正面から撮影できる。


ただし、そこには網のフェンスが張り巡らされており、通常の車載カメラではピントが網に合ってしまうという難点があった。

そこで、外に出て網目の間に小型カメラをセットし、その上から目隠しとしてフリースの服を掛けてカムフラージュ。


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素人目には落し物にしか見えないが、内心はひやひやしていた。

カメラとは気付かれないと思うが・・・


――拾得物としてショッピングモールのスタッフが回収してしまう可能性もある。


フェンスのカメラを気にしながら張り込みをしていた。


張り込み中、そんな懸念が現実になった。


30分ほど経った頃、ジョギングがてら散歩している様子のおじさんがこちらに近づいてくる。気にせず通り過ぎるかと思いきや、連れていた犬がフリースに興味を示し、クンクンと鼻を押し付け始めた。


「マジかよ……」


犬はフリースを咥えて引っ張り出そうとし、あろうことか中のカメラまで引っ張り出しかけている。

慌てて車から飛び出し、「何してるんですか!」と声をかける。


「君の?」と、おじさんは悪びれることもなく去って行った。


この作業がまた難しい。


網越しになるためピントが微妙にズレやすく、カメラのモニターを見ながら手動でピントを調整し続けなければならない。つまり、ほぼ手持ち撮影のような集中力が求められる。


対象者たちはラブホテルに入ってから、約3時間が経過した。


疲労がじわじわと肩や首に溜まり、目も乾いてくる。だが、油断してシャッターチャンスを逃せば、今日の苦労が水の泡となる。



そしてついに、その時が訪れた。


ホテルの出入口が開き、黒のワンボックスに向かって歩いていく2人の姿が現れる。

ピントがずれないようにカメラを合わせる


――数枚、角度を変えながら撮影していいく。


浮気妻はマスクをしていたが、服装と髪型、動きの癖から本人であることは明らかだった。


男の方はキャップをかぶり、いかにも「バレたくない」格好だったが、ナンバーはすでに撮影済みだ。


2人は乗車し、そのまま発進。

この瞬間、証拠写真が成立した。


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浮気現場の入退館、そして人物特定。これだけあれば、証拠としては十分に法的価値がある。

車両班とバイク班は、再び尾行態勢に入り、ワンボックスの帰路を追い始めた。


探偵としてはこの後も、帰宅の動線や別れ際の行動もチェックしておきたい。浮気相手の自宅が特定できれば、さらなる証拠を積み上げることも可能になる。


調査はついに佳境を迎えた。ラブホテルでの証拠を押さえた今、残された課題はただ一つ。浮気相手の身元を明らかにすること


ラブホテルを出た二人は黒のワンボックスに再び乗り込み、しばらく会話を交わすとゆっくりと走り出した。その様子を探偵は、呼吸を潜めるような張り詰めた緊張感の中で見守っていた。


探偵は後部座席に設置したモニターで、車に固定したカメラの映像を確認しながら、ワンボックスが向かう方向を確認する。


「出た……動いたぞ」


ラブホテルから出て10分ほど、ワンボックスは浮気妻の自宅付近から少し離れたコンビニへと向かった。店の明かりが通りを淡く照らし出し、深夜の静寂にほんのわずかな生活の気配を漂わせている。


コンビニの前で車が止まり、助手席のドアが開いた。浮気妻が降りる。探偵はその瞬間を、静かに、だが確実に撮影した。


問題はここからだ。浮気妻は降りたが、浮気相手の男はどこへ帰るのか。この足取りを押さえることが、今回の調査の最終局面であり、極めて重要な任務となる。


探偵はゆっくりとギアを入れ、車のライトを点灯させずにスーッと後を追う。ここからは慎重さが命だ。


ワンボックスは国道へと進んでいく。この道は比較的交通量も多く、尾行には都合が良い。車間を保ちつつ、探偵はひたすらその後ろ姿を追う。テールランプが赤い尾を引くように夜道を照らし出す。


およそ15分ほど走ると、ワンボックスは郊外の住宅街へと差しかかった。

「……ここからが本番か」


住宅街に入った途端、交通量が激減する。無駄に目立つわけにはいかない。探偵は車間距離を更に広げ、テールランプの赤い光だけを頼りに慎重に尾行を続けた。


一度右折、次に左折、しばらくしてまた右折。車が曲がるたびに、その存在は闇の奥へと遠ざかっていくようだった。

「……ここが潮時だな」


探偵は直感的にそう判断した。これ以上近づけば、浮気相手に気取られる危険がある。


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尾行を一時的に止め、最後にワンボックスが右折して入った道を慎重に進む。

テールランプは、もう見えない。


「……消えたか」


だが、尾行の終了は諦めを意味しない。


探偵は、その周辺をくまなく捜索した。エンジン音を極力抑え、速度も落とし、あたかも道に迷った一般車を装いながら。


10分ほど経った頃だった。


「あった」


閑静な住宅街の一角。小ぢんまりとした一軒家の敷地内に、黒のワンボックスが駐車しているのを発見した。


探偵は慎重に車を降り、闇に紛れるようにして歩きながら、住宅の外観を確認。門柱には表札があり、明かりもついている。どうやらこの家が浮気相手の自宅である可能性が極めて高い。


住宅の全体像、駐車された黒のワンボックス、そして表札。これらを確実にカメラに収めた。


フラッシュなど無論使用しない。高感度でノイズの少ないレンズを使って、静かに、しかし確実に記録していく。


「これで……ひとまず、今日の任務は完了だな」


浮気相手の素性を明らかにするための手がかりは、すべてここに揃った。


探偵はもう一度、現場を慎重に見渡した。周囲に人影はない。静寂に包まれた住宅街の夜の空気は、緊張の糸を少しだけ緩ませてくれる。


車に戻り、ドアを閉めたとき、カチリとロックの音が静かに響いた。その音がまるで、「今回の調査は、これで一旦の締めくくりだ」と告げるようだった。


エンジンをかけ、無音のまま住宅街を離脱する。


次なる行動の報告を胸に、探偵は夜の闇の中へと溶けていった。







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