

準備
まずは、二人の自宅周辺の地図を広げ、周辺の地理を頭に叩き込む。次に、彼らのSNSアカウントがないか、公開情報から探る。もし、彼らが心労を偽装しているなら、休業中に羽目を外している可能性は十分にある。 その証拠が、ネット上に転がっていることも少なくない。だが、彼らは用心深く、...
7月20日


開幕
事務所に戻り、受け取った資料を広げる。B氏は30代後半の男性、C氏は20代後半の女性。二人とも、会社ではそれなりの役職に就いていたようだ。 そして、問題の病院は、都心から少し離れた場所にある、小さなクリニックだった。ネットの口コミには、「すぐに診断書を書いてくれる」「親身に...
7月19日


素行調査の依頼
「そこで、まずはこのB氏とC氏の素行調査をお願いしたいのです。彼らが本当に心労で休業しているのか、それとも偽装なのか。その実態を明らかにしていただきたい」 依頼内容は明確だった。俺は佐藤氏の話を聞きながら、頭の中で今回の案件の難易度を測っていた。心労の偽装を暴く。...
7月18日


疑い
その言葉に、俺の探偵としての嗅覚が反応した。簡単に診断書を出す病院。これは、今回の依頼の核心を突くキーワードになるだろう。 「弊社としましては、彼らが副業を咎められ、さらには仲間が解雇されたことへの 逆恨み から、心労を装い、会社から不当な休業補償や、あわよくば損害賠償まで...
7月16日


心労を理由に
佐藤氏の声には、感情はほとんど含まれていなかったが、その言葉の端々から、彼らの抱える苛立ちが伝わってくる。そして、問題はここからだった。 「Aの解雇後、驚くべきことに、そのグループに属していた残りの男女二名、B氏とC氏が、ほぼ同時期に『心労』を理由に休業を申請してまいりまし...
7月15日


素行不良社員
「しかし、このグループは、就業時間中にまでその副業、具体的には不動産取引や投資マンションの購入に関する活動を行うようになりました。社内PCで物件情報を閲覧したり、取引先と連絡を取ったりと、目に余る行為が頻発したため、再三にわたり厳重注意を行ってまいりました」...
7月14日


依頼内容
佐藤氏は、手元のタブレットを操作しながら、淀みなく話し始めた。 「弊社には、以前から社内で副業を行うグループが存在しておりました。就業規則上、明確な副業禁止規定はございませんでしたが、原則として副業は禁止という認識でおり、プライベートの範囲で行う分には黙認しておりました」...
7月13日


面談
約束の日、俺は佐藤氏が指定した丸の内の高層ビルへと向かった。 ガラスと鉄骨でできた巨大な建造物は、まるで現代社会の神経中枢のようだ。エレベーターで最上階まで上がり、案内された会議室は、無機質な白とグレーで統一され、窓の外には東京の街並みがジオラマのように広がっていた。...
7月12日


依頼電話
電話が鳴ったのは、一週間前のことだ。受話器から聞こえてきたのは、いかにも企業人らしい、抑揚のない男の声。 「私、株式会社セントラル・ソリューションズの法務部、佐藤と申します。御社に、いくつかご相談したい案件がございまして」 企業案件。...
7月11日


夏の探偵日誌開幕 企業内部の影 ~疑惑の診断書と二つの顔~
アスファルトの照り返しが、陽炎のように揺らめく真夏の午後。事務所の窓から差し込む西日が、使い古された木製のデスクに、歪んだ光の帯を描いていた。 扇風機が首を振り、埃っぽい空気をかき混ぜる音が、耳障りなほど大きく響く。前回の浮気調査で味わった苦い経験は、まだ心の奥底に澱のよう...
7月10日























